アップルとサムスンが、スマートフォンの特許技術を巡って世界中で訴訟合戦を繰り広げ、カリフォルニア州連邦地裁では、アップルが、10億ドル超の損害賠償金の勝訴判決を得たことは未だ記憶に新しいと思います。グーグルは、特許権の拡充のためにモトローラ・モビリティを125億ドルで買収しました。さらに、大企業だけでなく、ベンチャー企業に過ぎなかったUberやSquareは、サービス開始前に特許出願を行うことで事前に競合他社の参入を阻止し、短期間でスタートアップからマルチミリオン企業に成長しました。
今回はこのように企業の経済活動や資産価値をも左右するものとなっている知的財産権について説明します。

権利取得-他者との競争に勝つために

特許

アメリカではUtility Patentと呼ばれています。特許権を取得すると、出願から20年間にわたり、発明の実施(使用、生産、販売、輸入等)を独占することができます。このため、他者が特許発明を実施したければ、特許権者から製品を購入するか、ライセンス供与を受けるか、特許権そのものを譲渡してもらう必要があります。したがって、特許権を持つということが強力なビジネスツールとなるわけです。

意匠

アメリカではDesign Patentと呼ばれ、物品の美的外観を保護します。いわば製品の見た目となるため、通常の特許に比べると権利侵害の判断が容易なので、権利者に有利な判決が出やすいです。また、特許に比べると登録率が高いので、近年、出願数が増加しています。

商標

市場に流通する商品や提供されるサービスの出所を明確にする役割を担っています。また、消費者の立場からすると、「このブランドの製品なら安心」という購入の選択基準ともなるため、品質保証機能も持っています。ブランドは、使えば使うほど信用力が増し、価値が高まることから、商標権は、特許権とは異なり、更新手続きをすることで半永久的に維持することができます。

調査-安全にビジネスを行うために

これまでは積極的に知的財産権を取得するという立場から説明を行いましたが、逆に知的財産権を行使され、ライセンス料を要求されたり、訴訟の被告の立場に立たされたりする場合もあります。特に、パテント・トロールと呼ばれる、第三者から特許を買い集め、企業から高額なライセンス料や和解金を得ることをビジネスモデルとする個人・団体が問題となっています。商標においても、製品発売後に、他者の登録商標に類似しているという警告を受けたために、安全にビジネスを行うためには、商品・サービスのローンチ前に他人の知的財産権を侵害していないかの調査(クリアランスサーチと言います)を行うことをお勧めします。もしも気になる先行特許・商標が見つかれば、専門の弁護士に鑑定書を書いてもらうことが重要です。非侵害であるという鑑定書を持っていれば、仮に侵害訴訟になったとしても、故意侵害(最高で実損害額の3倍の賠償金が認められる)を回避することができます。