米国特許商標庁(USPTO)は、2026年5月21日付で「PCT Informed Examination Request (PIER) パイロットプログラム」の開始を発表いたしました。
本プログラムは、PCT国際段階での審査結果(国際調査報告など)を踏まえ、USPTOでの実体審査が開始される前に、出願人に「今後の審査の進め方」を選択させる新たな取り組みです。概要は以下の通りです。
1.パイロットプログラムの目的
出願人に対して、審査着手の直前にPCT国際段階の引例等(成果物)を踏まえた事前対応を促すことで、審査の効率化および質の向上、並びに未審査案件(インベントリ)や審査待ち期間の削減にどのような影響を与えるかを評価するパイロットプログラムです。
(※本プログラムは2027年4月9日まで実施される予定です)
2.対象となる出願
本プログラムの対象となるのは、未審査の米国国内段階移行出願(35 U.S.C. 371に基づく国内移行出願)のうち、USPTOの裁量によって選定された出願のみです。通常の出願(35 U.S.C. 111に基づく出願、すなわち、米国への直接出願、パリルート出願)及び意匠特許出願は対象外です。
出願人から本プログラムへの参加、参加辞退、または除外を求める申請を行うことはできません。
選定にあたっては、以下の条件を満たす出願が優先的に選ばれます。
• 審査待ち期間が長い技術分野であること
• 5~6ヶ月以内に審査官へ割り当て(ドケット)される見込みであること
• PCT国際段階の成果物において、少なくとも1つの「X」または「Y」文献(新規性・進歩性を否定する文献)が引用されていること
3.USPTOからの通知と出願人の選択肢
本プログラムの対象に選定されると、USPTOからPCT国際段階の成果物を参照した「情報要求(Requirement for Information: RFI)」(書式:PTO-2357)が発行されます。これはオフィスアクションの一種ですが、実体的な第一回審査通知(First Action on the merits)ではありません。
この通知(RFI)を受領した場合、出願人には応答する法的義務が生じます。応答しなかった場合は出願が放棄(Abandon)扱いされますので、ご注意下さい。RFIは37 CFR 1.105に基づいて発行されるため、応答期間は通知の発行日から2か月となります。ただし、所定の期間延長費用(Extension of Time fees)を支払うことで、最大4ヶ月(合計で6ヶ月まで)延長が可能です。
応答にあたっては、出願人は必ず所定のフォーム(PTO/SB/478)を使用して期限内に回答しなければなりません。回答にあたっては、以下の3つの選択肢からいずれか1つを選ぶ必要があります。
• 審査を進める (Proceed with examination)
審査の順番待ちをそのまま進めます。この際、国際段階での引例を克服するために、審査を有利な状態にするための自発補正(Preliminary Amendment)をあわせて提出することが推奨・許可されています。
• 審査を12ヶ月遅らせる (Delay examination)
本要求に対する回答書がUSPTOに受領された日から、審査官への割り当てを「12ヶ月間」猶予させることができます。なお、一度この遅延が承認されると、猶予期間を早期終了して審査を再開させることはできません。
• 出願を明示的に放棄する (Expressly abandon)
国際段階の引例等を考慮し、米国での権利化を断念(放棄)します。
4.実務上の留意点
• 応答義務: 延長を含めた最終期限(発行日から6ヶ月)までに指定されたフォーム(PTO/SB/478)を用いた応答が行われなかった場合、出願は放棄されたものとみなされます。
• 不備があった場合: 提出したフォームに不備(複数チェックが入っている、署名漏れなど)があった場合は、不完全な応答として扱われ、通常2ヶ月(最大6ヶ月まで延長可能)の応答期間を定めた欠陥通知が発行されます。
詳細は添付の官報(Federal Register/Vo. 91, No. 68)及び USPTOのPIERパイロットプログラムの公式サイトをご覧ください。
