キッコーマン株式会社の「しょうゆ卓上びん」が、2018年3月30日付で日本国特許庁により立体商標として登録され、大きな話題となっております。キッコーマン株式会社のホームページによれば、「海外では、米国、欧州などですでに「立体商標」として登録されています。」となっておりますので、実際に米国ではどのような登録がされているのかを調べてみました。

USPTOのデータベース(TESS)によれば、権利者がキッコーマン(Kikkoman)で、立体商標(three-dimensional mark)のものは4件存在します。登録順に、
Registration No.1045670

Registration No.1045671

Registration No.78712769

Registration No.78712773

です。

日本において、文字や図形を付さず、商品や容器状そのものを立体商標登録するためには、商標法3条2項(使用による特別顕著性の獲得)の要件を満たさなければならず、この特別顕著性の証明が非常に困難です。

米国では4件も登録になっているので、特別顕著性のハードルが低いのではないかと思われるかもしれませんが、実は上記4件のうち、最初の2件(1045670、1045671)はsupplemental register(補助登録)です。補助登録は米国特有の制度ですので、少し解説をしますと、出願審査の段階で、先行登録の類似商標はないが、商標そのものとしての識別力が弱いと判断された場合には、補助登録での登録は許可するという通知がされます。補助登録された場合には、5年間継続使用した後に、継続使用により顕著性を獲得したことが認められれば、主登録(principal register)が認められます。したがって、米国においても最初の2件の出願時(1976年)では、Kikkomanの「しょうゆ卓上びん」には自他商品識別力が欠けると判断されたわけです。そして、後の2件(78712769、78712773)の方を見ますと、Prior Registrationsとして先の2件が挙げられております。

補助登録には主登録に認められるような排他的権利は発生しませんが、後願の同一又は類似の商標登録を排除することができます。また、使用意志があるだけでは足りず、米国で現実に使用が開始されている、又は外国出願・外国登録を基礎とした出願であることが要件とされます。したがって、米国ではまだ著名でないが既に販売は開始している、又は、今後販売予定で、既に日本では商標登録出願をしている、というような場合には、とりあえず補助登録を行い、その後の5年の間に宣伝等を行って識別力を獲得して主登録にする、というようなことが可能です。