.はじめに

本記事では、話題のシリコンバレー建築の紹介と、建造物の内外装デザインにおける知的財産保護制度について簡単に説明します。

. Googleの新社屋「Google Charleston East

昨年、Googleがマウンテンビュー市に提出し、社屋拡張計画が議会で承認されました。(City of Mountain View – Charleston East参照[1])。2019年に完成予定だそうです[2]。当初Googleは、透明なテントのような新本社屋の建設を発表していましたが、用地が確保できず、計画の見直しを迫られていました。そこで、規模を縮小した新案を市議会に再度提出していました[3]。なお、弊所の近くにGoogleの本社があるので、建設現場を撮影してきました。建設は着々と進んでおり、骨組みも完成してきています。

【完成予想図】出所:Arquitectura Viva.com[4]

 

Google Plex前の Charleston Parkからの眺め
【2018年10月28日に弊所が撮影(現在建築中の社屋)】

 

Google Plex前の道路からの眺め
【2018年10月28日に弊所が撮影(現在建築中の社屋)】

 

 

出所:Arquitectura Viva.com[5]

建坪59万5000フィート(約5万50000平方メートル)の社屋の建設計画図面です。

 

 

出所:Arquitectura Viva.com[6]

特徴的なデザインとして、大きなサーカスのテントのようなデザインをしています。実際、サーカスのテントのように、その建造物は動かすこともできるそうです。

 

 

出所:Gigazine[7]

この特殊な形をした屋根は、太陽光を効果的に取り込める形状になっています。この特殊な形状のおかげで、日中は建物内に自然な光があふれて照明は最小限で済ませることができます[8]。最近の米国シリコンバレーでは、ハイテク企業の間で人材の引き抜き合戦が激しく繰り広げられており、企業は優秀な人材の確保・定着のために、必然的に働きやすいオフィス環境を整備・提供する必要があります[9]

なお、Google日本法人も2019年秋、本社を東京都渋谷区(渋谷ストリーム)に移転するとのことです[10]

 

 出所:arch daily[11]

 

. Apple park

先日、新型iPhone XS・XS Max・XRが発表された場所でも有名な“Apple park”です。

出所:Unsplash[12]

出所:e-flux[13]

 

. 米国におけるトレードドレス(Trade Dress) 保護について

1.トレードドレス(Trade Dress)とは

トレード・ドレスとは、商品又は役務の全体的な外観・イメージを表現することが多いですが、商品の包装において用いられるラベルや包装紙、容器の外観、及び商品を需要者に提示する際に用いられるディスプレーその他を含む概念です[14]。例えば、Two Pesos[15]事件では、「トレードドレスとは、ビジネスの全体的なイメージ」であるとされ、一方でWal-Mart[16] 事件においては、「ハート、花、果物などのアップリケで装飾された春・夏用の子供用ワンピース」という「商自体のデザイン」がトレードドレスであるとされています[17]。トレードドレスの審査において、審査官は、(1)機能的か否か(2)識別力があるか否かの2点について検討しなければなりません。(審査マニュアル1202.02 Registration of Trade Dress)

 

2.「Apple Store」のデザインで「トレードドレス」を取得

Appleは、2010年に出願した小売店舗「Apple Store」のデザインに関する商標権を取得するのに成功しています(※US Registration Number:4277913)。

出所:MacRumors [18]

出所:USPTOデータベース[19]より抜粋

出所:CVRIAから抜粋

その後Appleは、商標権を各国で拡大する取り組みを続けており、欧州連合内にあるAppleの全店舗のレイアウトについて商標権を主張できるとの判決も欧州司法裁判所から勝ち取っています(CVRIA参照)[20]。また、Reuters記事[21]によると、中国当局は雲南省昆明にある「偽造Apple Store」2店に閉店を命じたと伝えられています。

 

3.米国知財実務での建築物デザイン保護について

後述しますが、米国意匠法では建築物の内外装は保護の対象となります。そのため、意匠登録には一定のハードルがあるものの、商標登録のような識別力の立証に比べれば低いハードルであるため、先に意匠登録を行い、存続期間(登録日から15年)を満了後に商標登録に切り替えることも有効でしょう。(※意匠の存続期間中に、使用による識別力(secondary meaning)を獲得し、商標登録の後に10年毎に更新することで長期的な権利化が可能となります)なお、美術性のある建築物は、「建築の著作物」としても認められています。

 

. 建築物のデザインの保護状況[22]

1.日本における現行の空間デザインの保護対象範囲

現在、意匠法の早期改正で保護範囲を拡大が求められています。特許庁では、2018年8月6日に産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会を開催し、意匠制度の見直しの方向性と今後の検討課題について議論を開始しました[23]

(1)建築物

日本において、「意匠」とは物品の形状、…(2条)と規定され、「物品」とは、有体物である動産を指すと解されており、不動産は意匠による保護の対象外です。他方、使用時には不動産となるものでも、工業的に量産され、販売時に動産として流通するものは、意匠登録を受けることが可能です。

(2)内装

複数の物品(テーブル、椅子、照明器具など)や建築物(壁や床の装飾)から構成される内装のデザインは、一意匠一出願(7条)の要件を満たさないため、意匠登録を受けることができません。

(3)問題点

近年、顧客が体験する企業とのあらゆる接点(UX)のデザインが重視されている中、特徴的な空間デザインが差別化の要素となっています。しかし、現行意匠制度においては、建築物の外観や内装をはじめとする空間デザインを十分に保護することができていないとの声があります。なお、日本では、不正競争防止法2条1項1号「商品等表示」があり、それに該当するとして店舗外観等の使用差止めを認めた事例はあります。例えば、コメダ珈琲が和歌山市の喫茶店経営会社に対して店舗外観の使用差し止めの仮処分を申し立てが認められたのが有名です。

 

2.諸外国比較

(建築物の外観のデザイン)————————————————————————————————-

日本

・意匠は物品(動産)に限定されており、不動産である建築物のデザインは保護対象外。

・使用時に不動産となるものであっても、反復生産されるものであり、販売時に物品(動産)として扱われるものは保護の対象となります。

米国

・建築物のデザインは除外されることなく保護の対象となります。

欧州

・建築物のデザインは除外されることなく保護の対象となります。

中国

・建築物のデザインは保護の対象であるが、特定の地理的条件に適合し、固定された建築、他の場所で立て直すことができないものは保護されません。

韓国

・反復生産されるもので移動可能なものに限り、建築物のデザインが保護の対象となります。

 

(内装のデザイン)————————————————————————————————-

日本

・家具、照明等といった個々の物品の組合せは一部「組物の意匠」として保護されるが、物品のレイアウトや配置のみを特徴とする場合、保護の対象外です。

米国

・内装のデザインは除外されることなく保護の対象となります。

欧州

・内装のデザインは除外されることなく保護の対象となります。

中国

・意匠の保護対象が製品でなければならないので、内装のデザインは保護の対象外です。

韓国

・家具、照明等といった個々の物品の組合せは保護されるが、物品のレイアウトや配置のみを特徴とする場合、保護の対象外です。(なお商標法によって、内装デザインの一部をトレードドレスとして保護しています。

 

. おわりに

これからも建設が続くシリコンバレーのクリエイティブな建築や、日本をはじめ空間デザインの知的財産保護の動向について注目です。

—-以下、参考文献等—-

(※脚注番号をクリックすると、指定場所に自動で移動できます。)

[1] City of Mountain View – Charleston East http://www.mountainview.gov/depts/comdev/planning/activeprojects/charleston_east.asp 2018/10/05参照

[2] a as architecture http://aasarchitecture.com/2018/04/google-charleston-east-campus-will-become-reality-2019.html 2018/10/05参照

[3] WIRED https://wired.jp/2015/06/05/google-stakes-new-site-hq/ 2018/10/05参照

[4] Arquitectura Viva.com www.x.com/en/Info/News/Details/12604 2018/10/03参照

[5] 前掲(2)

[6] 前掲(2)

[7] Gigazine  https://gigazine.net/news/20170314-google-charleston-east/ 2018/10/03参照

[8] Gigazine https://gigazine.net/news/20170314-google-charleston-east/ 2018/10/05参照

[9] ITmediaビジネス http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1603/15/news045_2.html 2018/10/05参照

[10] IT media http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1711/17/news089.html 2018/10/05参照

[11] arch daily https://www.archdaily.com/806391/new-renderings-revealed-of-googles-mountain-view-campus-big-heatherwick-studio/58b7173ee58ece4d0e0000c3-new-renderings-revealed-of-googles-mountain-view-campus-big-heatherwick-studio-image 2018/10/17参照

[12] Unsplash https://unsplash.com/search/photos/apple-park-visitor-center%2C-cupertino 2018/10/03参照

[13] e-fluxm https://www.e-flux.com/announcements/163072/the-steve-jobs-theater-at-apple-park/ 2018/10/03参照

[14] 「知的財産の適切な保護に関する調査研究」経済産業省委託事業

[15] Two Pesos. Inc. v. Taco Cabana, Inc., 505 U.S. 763 (1992 )(n.1)

[16] Wal - Mart Stores, Inc. v. Samara Brothers, Inc.(529 U.S. 205)(2000)

[17] 板垣忠文「米国におけるTrade Dressの保護について」パテント(2007)Vol. 60 No. 4

[18] MacRumors https://www.macrumors.com/2017/08/11/apple-west-towne-moving-to-hilldale/ 2018/10/05参照

[19] USPTO http://tsdr.uspto.gov/#caseNumber=85036986&caseType=SERIAL_NO&searchType=statusSearch 2018/10/05参照

[20] WIRED https://wired.jp/2014/07/12/apple-retail-store-patent/ 2018/10/05参照

[21] Reuters https://www.reuters.com/article/us-apple-china-fake/chinese-city-orders-two-fake-apple-stores-to-close-idUSTRE76O0M720110725 2018/10/05参照

[22] 特許庁「意匠制度の見直しの検討課題」資料参照

[23] 特許庁 https://www.jpo.go.jp/iken/180807_isho_seido.htm  2018/10/05参照